コインベースが米国のナスダック市場に上場する。
時価総額で10兆円を超えるようだ。先物やオプション取引大手のCMEグループ(時価総額約7兆5千億円)や、ニューヨーク証券取引所を傘下に持つインターコンチネンタル取引所(同約6兆5千億円)を大きく上回る水準だ。
コインベースは、米国最大規模の仮想通貨取引所。登録利用者数は20年末時点で4300万人、預かり資産額は9兆5千億円に達する。日本最大規模の仮想通貨取引所ビットフライヤーの預かり資産(2,892億円)の約30倍だ。
このコインベースの決算をみると、昨年10〜12月の売上は615億円、純利益185億円、純利益率30%と利益率が高い。また、売上は前年同期比5.9倍ととんでもない成長である。
世界の仮想通貨ユーザーは今年1月時点で約1億600万人との調査があるので、約40%のユーザがこのコインベースを利用しているということになる。日本法人も作って、日本でも取引を始める予定だ。
この他に世界で有数のユーザーを持つ取引所というと、Binance、Houbiがあるが、これもコインベースに匹敵するほど巨大であり、ともに中国系である。
ビットコイン構想はサトシ・ナカモトの発表した論文から始まった。もちろんこの人が日本人かどうか個人かどうかは謎のままであるが、この名前を使うくらいだから、日本人となんらかしらゆかりはあるのではないか。ビットコインと日本人というのは、もともと結びつきが強い。
2010年頃、ビットコインの世界最大の取引所は、マウントゴックスといって東京を拠点にしていた取引所である。
順調に取引を増やしていたが、2014年にハッキング事件が起こり、85万BTCが流出した。当時の価値で約470億円、現在の価値だとなんと約4兆2,500億円になる。
その後、日本は世界に先駆けて、仮想通貨の法律を2016年に成立させ、仮想通貨の市場発展を政府も後押しした。
この後押しもあり、日本は世界最大の仮想通貨市場となり、中でもコインチェックというベンチャー企業が先進的な取り組みで急成長していた。
そこで、またもやハッキング事件が起こる。そのコインチェックが標的となり、NEM約580億円分が流出した。当時ハッキング事件で世界最大規模である。
この事件を契機に日本でも仮想通貨は危険なものと認識され、日本市場は一気に萎んでいった。
世界ではその後中国、米国中心に仮想通貨上の新しい金融サービスDeFi等が発展し、現在の市場の成長につながり、コインベース上場の流れとなった。
こうして振り返ってみると、本来なら日本が世界の仮想通貨市場の中心になっていた可能性は充分にあった。
しかしこうなったのは、なぜだろう。日本には新しいイノベーションを育てていく覚悟が、政治、経済界に足りなかったのだろうか。
リスクを嫌う国民性なのだろうか。
まだ、遅くはない。今からでも官民上げてこの市場を盛り上げてほしい。