中央銀行はそのお金の量を調節する一つの手段として用いているのが、公定歩合です。
公定歩合とは、中央銀行が、民間銀行に貸出を行うときの基準となる金利です。
お金の世の中への供給の流れは、中央銀行が民間銀行にお金(これをハイパワードマネーと呼ぶ)を供給し、
民間銀行がこのお金をもとに、信用を膨らまして、世の中にお金を供給するという流れとなる。
中央銀行が民間銀行への貸出を行う金利(公定歩合)を上げた場合、
借入をしている民間銀行にとって、資金の調達コストが上がるので、
民間銀行が企業や個人に貸出する金利も上げます。
貸出金利が上がると、企業や個人は借入をしにくくなり、
民間銀行からの資金の供給(貸出)が減少します。
こうして、中央銀行は、公定歩合を上げたり、下げたりすることで、
世の中に供給するお金の量を調節します。
ただ、民間金融機関の資金調達方法も多様化してきており、
現在は日本であれば、コール市場と呼ばれる民間銀行同士が短期の
資金を貸し借りする市場で、より低い金利でお金を調達できるので、
公定歩合による操作は以前より機能しなくなっているのが現状です。
よって、現在、日銀はこのコール市場等の短期金融市場に資金を供給したり、
資金を吸収したりすることで、民間銀行へ供給するお金の量を調節しています。
現在の公定歩合の位置付けは、世の中に出回るお金の量を調節する手段というよりは、今後の金融政策の方向性
を示すメッセージの役目といったところが大きいと思います。
米国では金融危機に際し、民間の銀行が資金の過不足をやり取りする市場が機能停止してしまい、
中央銀行であるFRBからの貸出に頼るしかありませんでした。
よって、1年前は約6兆円程度の貸出があったそうです。
これが、現在は約1.3兆円程度に減少しているので、公定歩合を上げても民間の金利に直接的に大きい影響を
与えることはありません。
ただ、先ほども書いたように、米国の中央銀行が今後金利を上げる(下げすぎた金利を元に戻す)方向性を示し
たということは、これまでの大量にドルを供給してきた政策を転換するというメッセージなので、
このメッセージを受けて世界の市場は大きく動いていくと思います。
例えば、世界中に出回っていたドルが米国に戻ってくる過程で、米国以外(特に新興国)の株や通貨が売られ、
下落する等の影響が出ると思います。
米国の場合、実際にお金の量に直接影響を及ぼす政策は、FF金利(※)の上げ下げなので、この動向が今後注目
されるのです。
(※)
米国には、米国の民間銀行が中央銀行に預けている準備預金というものがあります。これをFF(フェデラル・ファンド)と呼びます。
準備預金とは、民間銀行が中央銀行に預ける預金のことで、一定額を預けることが定められている。
このFF金利は無利息なので、一定額以上の余った資金は民間銀行同士でやりとりします。この時の金利をFF金利といいいます。
米国の中央銀行であるFRBは、このFF金利の上げ下げによって、お金の量を調整しているのです。
こちらのFF金利がお金の量に直接影響を及ぼすので、今後はこのFF金利の動向に注目です。