GM側としても、270億円の無担保債務の債権者に、CDSを保有する機関投資家が多く含まれている可能性が高いことは、与件であったはず。この背景下で、なぜ一般債権者に対して、UAWより明らかに劣悪な条件提案をしたのであろうか?
今回のGM破綻により、最も被害をこうむるのは、CDSを保有していないか一般個人の債権者である。
老後の貯蓄をGM債券にAllocateしていた方々も多かろう。こうした一般投資家の持つGM社債価値がゼロとなり、他機関投資家はCDSにより、損失補填される。
(これはあくまで、筆者の仮説だが、ヘッジファンド等の機関投資家の中には、GM連邦破産法11条適用申請を見越し、CDSとパッケージにしてGM社債を事前にバルクで購入し、今回の交渉を決裂させ、アービトラージと獲ろうとしている者も存在するのではないか、と考えている。)
GMはその後、破産法適用申請を前提に、無担保債務・債権者に対し、譲歩案として、債務削減90%の対価を、10%の普通株式に加え、15%のワラントも付与する条件に提示し、30日、金額ベースで過半の合意を得たようだ。
そのGMも、欧州オペルはカナダのマグナに売却してCashを得つつ、「シボレー」「キャデラック」優良ブランドのみが分離した、新生GMで再生を目指す。破産法適用申請が通れば、だが、米国政府72.5%、UAW17.5%(2.5%のワラント)、債権者10%(15%のワラント)という「キメラ」のような事業体ではあるが、存続できる。
既に約200億ドルの支援を受けている米政府から追加で300億ドル、カナダ政府からの約90億米ドルの支援を受けられることもほぼ約束されている。
その中で働くUAWも、血は流さざるを得ない(今後2年間で労務費35%削減)が、守られる。
例えば、5月30日日経新聞によれば、GMの低燃費軽自動車16万台の生産計画についても、人件費の安価な新興国工場での生産を目論んでいたところに、UAWからの圧力で、「米国内雇用維持」を名目に、米国内生産に切り替えられる模様である。
結局、機関投資家と、GM組織、政治力あるUAWは保護され、一般個人投資家だけが大損し、新生GMは再生への道を探るチャンスが与えられることになる可能性が高い、というわけだ。
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