日経新聞によれば、今回のユニゾンのTOB買取価格は1株1,000円とするとのことである。
その論拠は、過去3ヶ月間の終値平均に約35%のプレミアムをのせた金額とのこと。
下記が、アデランスホールディングスの過去約1年間の株価変動だが、08年10月に大幅に落ち込んでいる。
その背景には、日経平均全体の大幅下落基調もあるが、加えて同社の業績下方修正、09年度の赤字転落予想への嫌気など、様々な要因があろう。
その後は、1,000円以下で推移しており、確かに「過去3ヶ月」の平均を取れば、ユニゾン・キャピタルのTOB価格の計算は合うには合う。
昨日の記事掲載の同社経営実績に見るように、09年2月期も最終赤字で終わっており、業績低落傾向に歯止めは掛かっていない。
また、ユニゾンの言う「3ヶ月」より長い目でその株価変動を見ても、その下落幅はきわめて大きい。
日経新聞によれば、スティール・パートナーズの取得平均株価は2,700円という。投資家から資金を預かるファンドとして、スティールが、投資先に経営責任を追及する(今回は取締役をほぼ自らの推薦者で固める役員選任議案提出予定)のは当然の論理ではある。またユニゾンの提案に猛烈に反対するのも当然。今回のTOBに応募、など論外であろう。
一方で、スティールは、ブラザー工業や、江崎グリコ株式の売却、持分比率低下など、今回の不況の影響からか株式現金化の動きも昨年末から進めている。今回のユニゾンとの対峙において、実際にプロキシー・ファイト(委任状争奪戦)となったとき、対抗する力があるのか疑問でもある。
今回は、「上場維持」が宣言されているため、ユニゾンの提示する1株1,000円、でスティールのみならず、一般個人投資家も損失を確定せざるを得ない状況には、現状は無い。但し、
業績下方修正
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株価暴落(リーマン・ショックの影響もあろうが)
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「グリーン・メーラー的」ファンドから経営陣がプレッシャーを受ける
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ホワイトナイト的に上場維持をベースにユニゾンが現れ、低い株価でのTOB宣言実施
という流れを見ると、個人投資家は枠外に外された、ファンド主導のシナリオで、物事が動いているようにも見える。
「グリーン・メーラー的」ファンドから経営陣を「守る」ホワイトナイトとしての登場は、ホリエモンがニッポン放送買収によるフジテレビメディアグループ支配を狙った際の、SBI北尾氏の登場、というシナリオにかぶる。
「公開維持」宣言にしても、「牛角」で有名な、レックス・ホールディングスを、アドバンテッジ・パートナーズが非公開化した際の「教訓」による計算が見え隠れする。
レックス非公開化の際のTOB株価について、事前に不当且つ連続的な業績下方修正報告による株価下落操作があった疑惑があり、当該価格が、一般投資家の利益を担保する適性価格であったかが、未だ裁判で争われている。