公的年金の2007年度に続き2008年度もマイナス運用の見込みである。2007年度は約6兆円の損失2008年4月〜12月で約8兆円の損失を出しているようだ。2年弱で計14兆円の損失である。
年金の市場運用分(財政投融資除く)は2006年度に85兆円の運用残高があり、新規流入分約20兆円を足すと何も運用しなくても105兆円(85兆円+20兆円)の運用残高があるはずだが、この2年弱で14兆円の損失を出しているので、現在は91兆円(105兆円-14兆円)の運用残高と大きく目減りしている。また、運用でマイナスにしているばかりか、この運用を任されている年金積立金管理運用独立行政法人の人件費と運用委託手数料に巨額のお金が流れていると想像できる。
現行の年金制度が前提としているのは向う約100年にわたり平均4.1%の名目利回りである(名目利回り=実質利回り+物価上昇率)。名目利回り4.1%というのは、物価上昇率が年率2%の場合、実質利回りで2.1%(4.1%−2%)ということである。例えば、10,000円の物の価格が2%の物価上昇により、1年後に10,200円になっている場合、何も運用をしなければ10,000円しかないので、1年後はこの物を買えません。名目金利2%(物価上昇率2%なので、実質利回りゼロ)で1年間運用できれば、1年後10,200円になっているので、この物を10,200円で買えます。ただし、運用による儲けはありません。名目金利4.1%(物価上昇率2%なので、実質利回り2.1%)で運用できてれば、1年後10,410円になっているので、この物を10,200円で買って更に210円のおつりがくるということです。運用による実質の儲けは210円ということです。
さて、向う100年にわたり平均4.1%利回りを維持するというのは可能でしょうか?実際に2002年度〜2008年12月までの約7年間の年金の運用実績をみてみると、7年の複利で1.4%という結果である。2001年度末の年金市場運用残高は約27兆円だったので、この1.4%の複利であれば現在29兆円に残高は増加しており、+2兆円の運用収益である(毎年の新規流入分は除く)。4.1%で運用してれば7年後35兆円に残高が増加しており、+8兆円の運用収益である。この6兆円の差は大きい。逆に年金運用は6兆円もの収益機会を逸しているのである。この7年間は物価上昇はほとんどないので、1.4%の運用でも実質利回りでいえば損はしていないといういいわけはできますが。
今回の4.1%の名目運用利回りの内訳は、物価上昇率の1%に将来の実質長期金利2.7%と分散投資効果0.4%を足したものである。現在、物の価格の上昇は見た目収まっているが、ドルを含め世界のマネーがじゃぶじゃぶあふれており、物に対するマネーの価値が減価している状態にある。今後、相対的に物の価値は上昇していくと予想されるので、物価上昇率は1%というのは前提としてはどうかと思う(通常の経済状態で2〜3%が妥当)。もし、物価上昇率が前提の1%を超えるようだと、4.1%を想定して運用していると、実質金利が減ってしまい運用による儲けは少なくなるのである。物価上昇が4.1%を超えてくると運用による儲けはなくなるのである。今後は年金運用ももっとインフレヘッジを意識したものにすべきではないか。
次回に続く
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